粘度の高い液剤も怖くない!製造業ディスペンサーの安定塗布テクニック jupite, 2025年9月3日2025年11月28日 ネバネバした接着剤の糸引き、タレ、吐出量のバラつき…。まるで言うことを聞かない頑固な職人のようで、頭を抱えていませんか? 「昨日まで順調だったのに、なぜ今日は機嫌が悪いんだ!」なんて経験、身に覚えがありませんか?悔しいですよね、その気持ち、痛いほどわかります。 はじめまして。現場の無駄をゼロにする「流体の魔術師」、桜井 稔です。 何を隠そう、私も20代の頃は原因不明の塗布ムラに悩まされ、連日深夜までラインに張り付いて眠れない夜を過ごした一人です。その悔しさから、ひたすら液剤の”声”に耳を澄ませてきました。 今日の記事は、そんな過去の私と同じように、一人で悩みを抱え込んでいる現場のあなたのために書きました。勘と経験だけに頼る泥沼のトラブルシューティングは、もう終わりにしましょう。 この記事を読み終える頃には、高粘度液剤を安定させるための「3つの着眼点」が明確になり、「自分でもできるかもしれない」という確かな手応えを感じられるはずです。さて、今日も液剤の声に耳を澄ませてみましょうか。 目次1 なぜ高粘度液剤の塗布はこれほど難しいのか?~まずは”相手”を知ることから始めよう~1.1 現場を悩ます三大現象:「糸引き」「タレ」「吐出ムラ」の正体1.2 本当の敵は粘度じゃない?見落としがちな「温度」という名の黒幕2 明日からできる!高粘度液剤を”手なずける”ための3つの着眼点2.1 着眼点①【通り道】神はノズルの先端に宿る2.2 着眼点②【液剤の機嫌】温めて、語りかける2.3 着眼点③【最後のひと押し】キレの良い”別れ際”を演出するサックバック3 それでも安定しない君へ。流体の魔術師からの”奥の手”3.1 失敗談から学んだ「最高の機械が、最適解とは限らない」3.2 意外な盲点、治具の工夫と作業手順の見直し4 まとめ なぜ高粘度液剤の塗布はこれほど難しいのか?~まずは”相手”を知ることから始めよう~ 高粘度液剤を安定させる第一歩は、相手の性質を正しく理解することから始まります。なぜ、あれほどまでに私たちの言うことを聞いてくれないのでしょうか。 現場を悩ます三大現象:「糸引き」「タレ」「吐出ムラ」の正体 現場で起こる問題のほとんどは、次の3つの現象に集約されます。 糸引き:塗布を終えたのに、ノズルの先から納豆のように糸を引いてしまう現象。 タレ:狙った位置に塗布したはずが、重力に負けて垂れてしまう現象。 吐出ムラ:毎回同じ設定のはずが、出てくる量が多かったり少なかったりする現象。 これらの根本的な原因は、液剤が持つ「粘り」、つまり粘性にあります。粘性が高いということは、液剤を構成する分子同士が強く手を取り合っているような状態です。だから、押し出すのにも大きな力が必要ですし、スパッと切ろうとしても「まだ離れたくない!」と抵抗する。これが、あの厄介な現象たちの正体なのです。 本当の敵は粘度じゃない?見落としがちな「温度」という名の黒幕 しかし、本当の敵は粘度そのものではない、と私は考えています。より厄介なのは、その粘度を裏で操っている「温度」という名の黒幕の存在です。 私が20代の頃、どうしても解決できなかった塗布ムラがありました。原因は、なんと早朝の気温低下による材料の粘度上昇だったのです。ほんの数度の違いが、マイクロレベルの吐出量誤差を生んでいたんですね。 高粘度液剤は、まるで寝起きの悪い頑固者のようなもの。気温が低いと、さらに機嫌を損ねてカタクなってしまうんです。あなたの工場のディスペンサー周りの温度は、一日を通して本当に一定だと言い切れるでしょうか? 明日からできる!高粘度液剤を”手なずける”ための3つの着眼点 相手の正体が見えてきたら、次はいよいよ具体的な対策です。高価な装置を導入する前に、まず確認すべき3つのポイントをお伝えします。 もちろん、現場の課題によっては、2液性エポキシ樹脂のような材料を扱うための高性能なディスペンサーによる精密な塗布が求められるケースもあります。そうした場合は、最新の装置情報を参考にしつつ、まずは基本に立ち返ることが重要です。 着眼点①【通り道】神はノズルの先端に宿る 「神は細部に宿る」と言いますが、私はこう断言しています。「神はノズルの先端に宿る」、ですよ。 高粘度液剤にとって、細くてまっすぐなノズルは非常に窮屈な通り道です。この通りにくさ(流体抵抗)が、圧力の不安定さを生み、吐出ムラに直結します。 そこでおすすめしたいのが、「テーパーノズル」です。これは、根元から先端にかけて、なだらかに内径が細くなっていく形状のノズルです。この形状が液剤をスムーズに導き、余計な背圧をかけずに吐出を安定させてくれるのです。もし今、ストレートタイプのノズルをお使いなら、一度試してみる価値は十分にあります。 着眼点②【液剤の機嫌】温めて、語りかける 先ほど、温度が黒幕だとお話ししましたね。ならば、こちらで温度を管理し、液剤の機嫌をコントロールしてやればいいのです。 これは私の趣味である渓流釣りとよく似ています。流れの速さや水温を読まずして、魚の気持ちは分かりません。液剤も同じで、彼らが最も心地よく流れてくれる「適正温度」を見つけてあげることが重要です。 シリンジやタンクにヒーターを取り付けたり、温調システムを導入したりすることで、液剤の粘度を一定に保つことができます。「うちの液剤は、何度くらいが一番ご機嫌かな?」と、まるで語りかけるように最適な温度を探してみてください。それだけで、驚くほど素直になってくれることがありますよ。 着眼点③【最後のひと押し】キレの良い”別れ際”を演出するサックバック 糸引きやタレは、いわば「別れ際の悪さ」が原因です。吐出が終わった後もノズルの先端に残った圧力が、ダラダラと液剤を押し出してしまうのです。 この問題を解決する切り札が、ディスペンサーに備わっている「サックバック機能」です。これは、吐出が終わった瞬間に、材料をわずかに「吸い戻す」機能のこと。要するに、家庭で使う醤油さしの口を、最後にちょっとだけ吸って液だれを防ぐ、あのイメージです。 このサックバックを適切に設定することで、ノズル先端の圧力がスッと抜け、驚くほどキレの良い塗布が実現できます。まさに、別れ際の美しい、見事な仕事と言えるでしょう。 それでも安定しない君へ。流体の魔術師からの”奥の手” ここまで紹介した3つの着眼点を試しても、まだ問題が解決しないこともあるかもしれません。そんな時こそ、思い出してほしいことがあります。 失敗談から学んだ「最高の機械が、最適解とは限らない」 実は私、独立当初に大きな失敗をしています。最新の高価なディスペンサーをクライアントに導入したものの、現場の作業員の方々が全く使いこなせず、かえって生産性を落としてしまったのです。 社長から「あんたは機械しか見ていない」と厳しく叱責され、目が覚めました。この苦い経験から、「最高の技術が、必ずしも現場にとっての最適解ではない」ということを痛感しました。大切なのは、その工場のレベルや文化に合った「半歩先の改善」を提案することなんです。 意外な盲点、治具の工夫と作業手順の見直し 高価な装置に頼る前に、やれることはまだあります。例えば、製品を固定する治具の角度を少し変えるだけで、液剤のタレが収まるかもしれません。塗布する順番を、内側から外側へ変えるだけで、糸引きが製品に付着しなくなるかもしれません。 こうしたアナログな改善は、決して侮れません。最新鋭の機械を導入するよりも、現場の知恵が詰まったちょっとした工夫の方が、よほど大きな効果を生むことだってあるのです。結局、答えはいつも現場にあるんです。 まとめ さて、今回は高粘度液剤を手なずけるためのテクニックをお話ししました。難しく考える必要はありません。まずは、以下の3つのポイントをあなたの現場で確認してみてください。 通り道(ノズル)の最適化:液剤がスムーズに流れる道を作ってあげる。 液剤の機嫌(温度)の管理:液剤がご機嫌でいられる温度を保ってあげる。 別れ際(サックバック)の演出:キレの良い塗布で、糸引きやタレを防いであげる。 この記事が、あなたの工場の”無駄”をゼロにするための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。勘と経験だけに頼った戦いは、もう終わりです。データと理論に基づいたスマートな問題解決で、本当の意味での安定生産を手に入れましょう。 まずは、あなたの現場で使っているノズルの形状と、作業場の温度変化から確認してみてください。きっと、何かが見えてくるはずですよ。 最終更新日 2025年11月28日 by jupite ビジネス